「どうせDXするなら、一気に変えちゃったほうがいい」── とある物流DXの現場より|コスモ運輸株式会社
埼玉県内のとある物流倉庫。名前は、コスモ運輸株式会社。
昨年までは、紙の配車表を手書きで作成し、FAXでやり取りする日々が続いていました。そんな物流の”アナログな現場”が、わずか1年という期間で大きく変化を遂げたといいます。
「とにかく入れてみよう」「わからないけどやってみよう」。そんな言葉を口にしながらも、行動したのはある3人のメンバー。代表の田澤さんと専務の志鳥さん、現場責任者の須藤さんです。彼らは、明るく、時には苦笑いを浮かべながらも、昨年末からのDX推進について率直に振り返ってくれました。月300件を超える請求書作成は今や随分な効率化、簡易化を達成。紙とFAXの世界から、クラウドシステムによる一元管理への転換は、想像以上に泥臭く、けれどもドラマチックな物語でした。
導入の決め手は「どうせバタバタするから、一気に変えちゃおう」という大胆な発想。繁忙期の真っ只中、11月末という物流業界では繁忙期とも呼べる時期に、なぜシステム導入を決断したのか。そこには、現場を知る者だからこその覚悟と決断がありました。
「アナログすぎる現場に衝撃を受けた」
── まず、導入前の状況について詳しく教えていただけますか?
志鳥:わたしが出向してきたとき、本当にアナログでびっくりしました。基幹システムどころか、データベースありませんでした。請求書もエクセルや手書きで、案件情報は担当者の記憶を頼りに作業を行っていました。会社ではパソコン業務が簡易的な表計算ソフトぐらいのアナログな状態でした。弊社は出版業界との取引が多いですが、いまだにFAXでのやり取りが一般的に行われています。その業務の効率性を損なっている環境の中で、どうやってデジタル化していくか。それが最初の課題でしたね。
須藤:ほんと、すべてが紙ベースでした。配車表も紙に手書きで。わたしたちの世代になって、だんだんエクセルに変えていきたいって思って、少しずつ変えはじめたのです。そもそも、なぜ変えようと思ったかというと、一つの場所にデータがあれば誰もがアクセスして見ることができるじゃないですか。紙だとその場所に行かないと見れないし、別の場所で確認するにはFAXしないといけない。
── 具体的な業務の流れを教えていただけますか?
須藤:たとえば、配送の依頼がくると、まず紙の配車表に手書きで記入する。それをエクセルに転記して……という感じです。ルート配送もあれば、出来高での運送もある。特に出来高の場合は、当日になってみないと配送量が確定しないから、前日の予定を組むのが難しくて。
志鳥:更新した情報も、何枚目の配送手配書が最新版なのかわからなくなることも。「どこを変更したんだっけ?」って探すことも多かったです。請求書作成も大変でしたね。運賃がお客様によって全部違うんです。それを月末にまとめて請求書にしないといけない。ひと月で300件以上ある請求書を、全部手作業で……。
── 相当な作業量ですね...。
須藤:はい。今から思うと本当によく回してたなって(苦笑)。たとえば、お客様の住所や電話番号なんかも、担当営業ごとにバラバラで管理していて。「このお客様の電話番号どこだっけ?」って探すのに一苦労でした。基本的な情報でさえ、一元管理ができていない状態だったんです。
「変えなきゃいけない」という焦燥感
── その状況を変えようと思ったきっかけはなんだったんですか?
志鳥:実は以前、製本業界に関わっていたときに受注管理システムを使っていた経験があって。その後ここにきてみたら、あまりにも何もなかったんで。「絶対に変えてやろう」って意気込みました。
── 最初から強い意志をお持ちだったんですね。
志鳥:ええ。うちの課題って、営業所ごとで情報が分断されていることなんです。たとえば、物流の営業所間で当たり前に共有されている情報(誰がどこへ何を運ぶ)が、営業所間でわからない現状がありました。将来的にはアライアンス先と配車状況も共有したいし、新規事業を進めるためにも、まずはここの課題を解決する必要がある、と思いました。物流展でいろんなシステムを見て回ったのも、その危機感があったからです。
須藤:率直にいうと私自身は、パソコンの業務にはすこし不安がありました。現場の技術出身なので、デジタル機器の操作にはあまり自信がなくて。でも、このままじゃいけないっていう思いは強かったですね。毎日同じ情報を何度も入力し、ミスを探して修正するという非効率な作業に限界を感じていました。
── 現場のスタッフの方々の反応はいかがでしたか?
志鳥:現状では日報から請求書まで、まだまだ手書きが多いんです。特に事務所は、元々ドライバーだった人も多いので、パソコンの入力作業が苦手な人もいます。だからこそ、デジタル化するなら徹底的に使いやすいシステムを導入したかったのです。
須藤:パソコンに苦手意識がある事務所で使うフォームは、できるだけ選択式にしたいな、とか。パソコンでの入力は時間がかかるんですけど、書かせると書けないんですけど、3〜4つの選択肢から選ぶだけなら、むしろ紙ベースの作業よりも効率的にできるんですよ。紙の方が手間がかかるって実感してもらえれば、自然とデジタル化に移行できるんじゃないかって。
── 具体的にどんなところから着手されたんですか?
志鳥:最初はエクセルでした。紙の配車表をエクセルに移行することから始めて。でも、それだけじゃ根本的な解決にならない。同じ情報を何度も入力しなきゃいけないし、更新した情報もすぐに共有できない。もっと上手いやり方があるはずだって。
システム選びの決め手
── そんな中で、ロジックスに出会ったわけですね。
志鳥:展示会でいろいろ見て回ったんですが、正直、どのシステムも一長一短でした。他社だと、なかなか明確な回答が得られなくて。でも、アセンドさんは違いました。まず、レスポンスの速さがよかったですね。こちらの質問や要望に対して、担当営業の方がすぐに「できます」「できません」という判断をはっきり応えてくれたので。
── 実際に導入している企業も見学されたとか。
須藤:八大株式会社さんという会社が導入していると聞いたので、その様子を見せていただいて。実際の運用現場を見るのと、説明を聞くのとでは全然違いますからね。
田澤:岩田さんという、東京都トラック協会の青年部の本部長をやられていた方なんです。うちも青年部で活動していたのでつながりがあって。
志鳥:「これ、使えるぞ」って八大さんの管理部長である櫻井さんが太鼓判を押してくれたんです。ただ、彼らの使い方を見て、「もっとできるはずだ」とも思いました。
── どういった点でですか?
志鳥:たとえば、ルート配送が多い会社さんだと、ある程度パターン化された使い方になる。でも、弊社では出来高での配送も多いので、当日の状況で柔軟に対応しないといけない。そういう意味では、もっと踏み込んだ使い方ができるのではないかと。
須藤:最初は「使いこなせるかな」って不安でした。でも、見学させてもらって、「これなら、PCに詳しくない自分でもなんとかなりそうだ」って。画面の作りとか、操作の流れとか、すごく直感的だったんです。
バタバタの11月に、なぜ導入を決断したのか?
── 導入を決めたのが11月末。物流業界では繁忙期だと思うのですが、そのタイミングで決断された理由は?
志鳥:みなさんに「なぜこの時期に?」って言われましたよ(笑)。でも、私と須藤の考えは違って。どうせバタバタするなら、一気にやっちゃった方がいいんです。1回終わってから、また新しいことを始めるより、どうせ大変なら全部まとめてやった方が効率的かなって。
須藤:正直、私も最初は「こんな忙しい時期に大丈夫かな」って。でも、志鳥の「一気にやろう」っていう強い意志に、なんか、説得力があったんですよね。
── 具体的に、どんな準備をされたんですか?
志鳥:10月は4回も打ち合わせをして。11月も3回。ほぼ毎週のように打ち合わせや訪問してもらっていた記憶です。普通、これだけ頻繁に来てくれるシステム会社ってないでしょう?
須藤:そうそう。システム会社さんは相談しても返信が遅いことが多いのですが、アセンドさんの対応はスピーディに返信が来るんですよ。あまりにも返信が早いので、「大丈夫かな、そんなに働いて……」って心配になるくらい(笑)。でも、その分、こちらの不安も質問も、すぐに解消できました。
「とにかく入れてみよう」という覚悟
── 導入直前は、どんな心境だったんですか?
須藤:もう、「とにかく入れればどうにかなるだろう」っていう。なんていうか……覚悟というか、開き直りというか(笑)。請求書作成でも、データを入れると料金表が連動してくるって聞いて、「これならいけるかも」って。
志鳥:よく「大丈夫ですか?」って聞かれたんですけど、「わかんないけどやるのが一番早いような気がしてる」って答えてました。わからないなりに、これを信じてやるしかないって。結局、同じ苦労をするなら、前に進む方を選びたかったんです。
須藤:今思えば、あの決断があったからこそ、今があるような気がします。毎日の業務に追われながら、少しずつシステムに慣れていって。最初は本当に手探りでしたけど、使えば使うほど、「あ、こういうこともできるんだ」って発見があって。
「誰でもできる」を目指して
── 実際に導入されてから、どんな変化がありましたか?
須藤:今は配車しながら『ロジックス』に入力するような形をとっているので、データ入力が1回で済むようになりました。イメージ的には全くそういう知識がなくても、入力していけばできるなっていう。一番大きいのは、月300件以上の請求書作業が、パートさんでもできるようになったことですね。
── それは大きな変化ですね。
志鳥:そうなんです。誰でもできることは、私たちが行わない方が良いと考えています。現在私たちが抱えている業務を他の人に任せられるのだったら、どんどん任せていきたいと思います。そして空いた時間でより付加価値の高い仕事に専念したいと考えています。会社も変革のタイミングを迎えているので、そういった意味でも、いろいろと各自が抱えている仕事を剥がしていきたいです。
須藤:ルート配送みたいなのだと、明日配送する、明後日配送するっていう流れが決まるんですけど、依頼されてすぐに運んでっていう出来高での仕事がこれまでは結構難しかった。そこも、今ではシステムで柔軟に対応できるようになりました。
活用率50%の現在地と、これから
── 導入からほぼ1年が経ちましたが、現在の手応えはいかがですか?
志鳥:私たちのロジックスの活用度は、まだ半分にも達していないと感じています。基本的な機能は日常的に使用していますが、本来の能力を十分に引き出せているとは言えない状況です。私たちの考えているところでは、ロジックスにはまだ多くの未開拓の活用方法が残されていると感じています。
須藤:実際に今、私と志鳥の二人でしかロジックスを使ってないんですけど、今後はこれを広げる1年になるかなとは思ってるんです。基本的に誰にでもできる仕事は、わたしたちがやらなくてもいいよねと思っているので。
── 最終的にどんな姿を目指されているんでしょうか?
志鳥:運送業において最も重要なのは、ドライバーの稼働時間を最大化することです。車両が迅速に配送センターに入出できるよう、効率的な仕組みを構築したいと考えています。具体的には、ドライバーが配送センターに到着してからすぐに出発できるよう、その滞在時間中に伝票処理と効率的な積み荷の調整を行い、ロスタイムを徹底的に削減したいと思っています。
須藤:今は、会社としての基盤というか成功パターンを作ってるイメージがあるんですね。いろんなものを入れたり、こういうのが難しいとか話しながら、だんだん良くなっていっている。これを今度、他の営業所とかパートナー企業とかに広げていきたいんです。すると、これからどんどんもっと使い勝手が良くなってくるんじゃないかなって。
── それは大きな変革になりそうですね。
志鳥:ええ。あとはアセンドさんのレスポンスの早さも、いま私たちが持っている強みだと思います。システム開発者の方との素早いやり取りがあれば、システム機能側の限界が明確になります。また新しいアイディアが浮かんだ時に、すぐにその実現可能性を確認できれば、私たちは適切な要望を出せるようになるのです。その結果、業務改善の提案内容を現実的なものに調整したり、場合によっては別の方向性を検討することもできます。このような確認作業が迅速に行えることは、とても効率的だと感じています。