「運送会社らしくない運送会社」の秘密。『ロジックス』が支える革新的経営
株式会社mirai計画は、愛知県みよし市に本社を構える運送会社です。創業からわずか6年という若い会社ながら、デジタル化を積極的に推進し、業界の常識にとらわれない経営で注目を集めています。決してデジタルツールの活用が進んでいるばかりではない業界のなかで、同社は創業初期からそれらを取り入れ、卓越した経営計画を立案、達成してきました。
では、すでにデジタル化を実現していた同社は、いったいどんな課題を抱えて『ロジックス』の導入を決断したのか。今回は代表取締役の柳川さんに、会社設立の経緯から、DX推進の背景、そして今後の展望までのお話を伺います。
既存の概念を打ち破る、新しい運送会社の誕生
── まずは会社設立の経緯について教えてください?
柳川:18歳の頃から運送会社でドライバーとして働いておりまして、22歳で独立し、mirai計画を立ち上げました。独立当時、運送業界にはいわゆる“固定概念”みたいなものがあって、「運送会社はこうあるべき」というイメージが強かったんですね。たとえば、事務所の雰囲気のあるある、使用するアプリやローカルルールなど、ある程度画一的なものがありました。
でも私は、そういった既存の概念にとらわれず、新しい形の運送会社を作りたいと考えていました。「運送会社らしくない運送会社」を目指し、既存の物流業界のあたりまえを覆して、より良い環境で働ける環境を実現したいなと。
── その想いが、現在の事業にどのように反映されているのでしょうか?
柳川:我々の事業の根幹にとても反映されています。たとえば、現在おもに扱っているのは細かい輸配送、自動車部品、食品パックなどです。一般的な運送会社が大型の荷物を中心に扱うのとは対照的に、我々は店舗納品のような小口の荷物が全体の4割くらいを占めています。
これは創業当初の経験が大きく影響しています。軽貨物事業から始めたのですが、一般貨物を取得し事業を始めようと思った矢先に、新型コロナが流行したタイミングで仕事がなくて、食品のパックやスーパー関連の商品を運んでいたんです。そこから徐々に事業を拡大してきました。
細かい・軽い荷物を扱って組み合わせて配送することで1運行あたりの売上を大きくすること、ある荷物の配送途中で別の荷物を積むなど効率的な配送ルートを組むことを重視しています。これは、大型の荷物だけを扱う会社には中々なし得ない、我々の強みですね。
このように、従来の運送会社の常識にとらわれず、細やかなニーズに対応することで、我々なりの独自性を打ち出しています。これが「運送会社らしくない運送会社」という理念の実践です。
── 定期便とスポット便の比率はどのようになっていますか?
柳川:現在は定期便が7割程度、スポット便が3割程度の比率です。以前はスポット便の比率が高かったのですが、徐々に定期便の比率を上げてきました。これは、安定的な収益確保と効率的な配車を目指した結果です。
定期便といっても、必ずしも毎日同じ場所に配送するわけではありません。例を挙げると、同じ方面への配送でも、積み場所が少し変わるといったケースもあります。そういった柔軟性を持たせることで、お客様のニーズに応えつつ、効率的な運営を実現しています。従来の定期便の概念として、お客様が指定したコースを走ることや、既存業者からの切り替えなどで、よくある1日1車1人で1運行のような形であったところから、現在は労働時間の圧縮なども加味して、10時間超のコースを分解して3人で分けて走ったり、いわゆるハンパ物と言われるような輸送をジョイントしながら一日の運行をしています。
── 車両台数や従業員数はどのくらいでしょうか?
柳川:現在は車両台数は32台で、ドライバーも30名います。内勤は私を含めて3名という体制です。創業時から比べると、だいぶ規模が大きくなりました。ただ、内勤の人数は増やさず、むしろ減らしています。これは後ほど詳しくお話するデジタル化の効果によるものです。
実は、この少ない内勤者数も当社の強みの一つ。間接コストを抑えることで、より競争力のある価格設定が可能になっています。
デジタル化しただけでは、DXとは言い切れない
── 御社の特徴として、デジタル化が進んでいると伺いました。そのあたりの背景を教えていただけますか?
柳川:我々は創業当初からSlack(IT業界を中心に活用されているチャットツール)をはじめとするデジタルツールを積極的に活用してきました。運送会社というと、アナログなイメージがあるかもしれませんが、私たちは「ITを使って運送事業をやっている会社」という感覚なんです。
背景には、創業メンバーの一人の存在がありました。とてもITが好きなメンバーで、常に新しいツールを調べたり導入したりと勧めてくれていたんですよね。私自身は彼ほど詳しいわけではありませんでしたが、その影響が大きくて、だんだんと使い始めるようになりました。
── 具体的にどのようなツールを使用されていたのでしょうか?
柳川:Slackはもちろんですが、GoogleカレンダーやGoogleスプレッドシート(オンライン上で活用できる表計算ソフト)なども活用していました。配車管理や請求書作成など、基本的な業務はこれらのツールで回していました。
たとえば、配車管理はGoogleカレンダー。各ドライバーの予定をカレンダーに入れることで、誰がいつどこにいるかが一目でわかるようにしていました。また、Googleスプレッドシートでは売上管理や経費管理を行っていました。
ただ、当初はあくまでデジタルツールを使っているというだけで、本当の意味でのDXは実現できていませんでした。データの連携や分析といった部分がシームレスに行える状態ではなく、まだまだ不十分だったんです。
── では、そういった課題感が『ロジックス』の導入を検討されるきっかけに?
柳川:そうですね。さらなる業務効率化を追求するうえでさまざまなツールを検討することになったんですが、その矢先に、ある経営者の方から「運送業なら『ロジックス』がいいよ」と紹介されたんです。実際に見てみると、我々の理想とする形に近かった。特に、カスタマイズ性が高く、常に進化し続けられる点に魅力を感じました。
当時は全体で20人くらいの規模感にも関わらず、内勤者が3人在籍しており、この状態では会社として規模を拡大していくのは難しいと感じていました。内勤者を増やせば間接コストが上がってしまいますし、かといって、少ない人数だけで業務を回すのにも限界があった。そこで、より効率的に業務を循環できるようにと、システム導入を検討したという背景です。
それまで、自分たちなりにいろいろなデジタルツールを活用してきましたが、『ロジックス』なら、我々が使っていた複数のツールの機能を一つのシステムに統合できる可能性を感じたんですよね。これにより、データの一元管理や業務の自動化が実現できるだろうな、と。
『ロジックス』による一元管理で、効率化を実現
── 実際に『ロジックス』を導入されてみていかがでしたか?
柳川:まず、組織が成長しているにも関わらず内勤者の人数が変わっていないので、業務効率が向上したといえます。導入前も現在も内勤者は2名ですが、現在はドライバーが30名もいてくれますからね。
特に『ロジックス』の導入によって大きく変化したのは、データの一元管理ができるようになったこと。以前は、配車情報、売上情報、経費情報などが別々のツールで管理されていましたが、『ロジックス』ではこれらのデータが連携されています。これにより、データの入力作業が削減されていますし、同時に、さまざまな分析も可能になりました。
── 具体的にどのような点が改善されたのでしょうか?
柳川:以前は請求書の作成や経理業務、配車業務など、すべてを内勤者が分担して担当していました。でも今は、『ロジックス』を介して多くの業務が自動化されています。具体的には、1名の内勤者で総務、人事、経理、決算書作成など、ほぼすべての業務をカバーできるようになりました。
たとえば、請求書作成業務についていうと、これまではドライバーが提出した日報をもとに、手作業で請求書を作成する流れをとっていましたが、これには多くの時間と労力がかかる。しかし、『ロジックス』なら、配車を組んだ結果をもとにして、ほぼ自動で請求書が作成されるようになりました。作業時間が大幅に削減されたのはもちろん、入力ミスも減少しました。
それと、配車業務も随分改善されましたね。以前はGoogleカレンダーを使って管理していましたが、『ロジックス』では配車状況の可視化によって、より効率的な配車が可能になり、車両の稼働率も向上しました。
── 導入時に苦労された点などはありましたか?
柳川:既存の業務フローをロジックスに合わせて変更する必要があったので、一部の社員からは抵抗もありました。スマートフォンでのシステム入力に慣れていないドライバーもいたので、最初は戸惑いがあったようです。
最初からまるごと変化するのは難しいので、段階的に移行するような動きをとりました。まずは、若手のドライバーから導入を始め、徐々に全体に広げていくといったイメージです。また、導入初期は従来の方法も並行して運用しながら、だんだんと『ロジックス』への移行を進めていきました。
また、とある社員がシステムの理解や運用方法の確立にも尽力してくれました。ドライバーへの個別指導や、マニュアルの作成など、細かなケアを担当してくれたおかげで、全面移行までにかかった期間は3ヶ月ほど。現在では、ほとんどの社員が『ロジックス』の利便性を実感し、積極的に活用しています。
削減できた時間を活用し、新給与体系を考案
──『ロジックス』の 導入後、新たに取り組まれた施策もあるとか。
柳川:給与制度の改定を行いました。具体的には、ドライバーの働き方に応じて「ライトコース」「バランスコース」「プロフェッショナルコース」の3つのコースを設定したんです。ライトコースは週20時間まで、バランスコースは週45時間、プロフェッショナルコースは週80→75時間程度の残業時間を想定しています。
これにより、ドライバーの生活スタイルに合わせた働き方を選択できるようになりました。子育て中の方や副業として働きたい方はライトコースを、しっかり稼ぎたい方はプロフェッショナルコースを選択するといった具合。働き方を選べるようになったことで、多様な人材を確保でき、人手不足対策にもなっています。
また、評価制度も刷新しました。売上や粗利だけでなく、安全運転や顧客満足度、労働時間の管理なども評価項目に加えました。特にユニークだと思っているのは、残業手当の仕組み。今までは、残業すればするほど残業代が増えるので、なかなか残業が減らなかった。そこで、法律の範囲内で、残業時間が増えるほど手当が減るような設計に変更しました。
残業手当が別途支給されるプロフェッショナルコースのみに適用する制度で、残業時間が45時間を超えると、それ以降の残業手当が逓減していく仕組みになっています。これにより、ドライバーは自然と残業を抑制するようになり、ワークライフバランスの改善にも繋がっています。
── 他にはない斬新な制度ですね。ドライバーの方々の反応はいかがですか?
柳川:導入当初は戸惑いもありましたが、徐々に理解が深まっていきました。特に、自分の働き方を選択できる点や、頑張りが評価に反映される点が好評です。この制度を設けたことで、効率的に無理なく働けるようになっているからか、ドライバーの定着率も向上しています。異業種からの転職を含めた、新規採用もだいぶ増えました。
── そのほか、経営面での変化もありましたか?
柳川:『ロジックス』の導入により、データに基づいた営業活動が可能になりましたね。たとえば、特定のルートの収益性や、時間帯ごとの車両の稼働状況などを分析し、そのデータをもとに新規顧客の開拓を行っています。これによって、今までよりも戦略的な営業活動が可能になりました。
規模拡大と同時に、筋肉質で確実な経営へ
── 経営者としての、財務面での取り組みについても教えていただけますか?
柳川:最近、財務管理の重要性を強く認識するようになりました。特に、PLだけでなく、BSやキャッシュフローにも注目しています。
車両の購入方法一つとっても、リースと購入では大きな違いがあります。リースだと短期的にはキャッシュアウトが少なくて済みますが、長期的には高コストになります。一方、現金購入は初期投資は大きいですが、長期的には有利です。
具体的な数字を挙げると、例えば1台1,000万円のトラックを5年リースで借りると、月々のリース料は約20万円。5年間で1,000万円以上の支払いになるわけです。一方、現金で購入した場合、初期投資は大きいですが、減価償却費を考慮しても長期的にはコストが抑えられます。
また、借入れについても戦略的に考えるようになりました。車両購入のための長期借入れを活用することで、キャッシュフローの改善を図っています。具体的には、10年程度の長期借入れを組むことで、月々の返済額を抑え、手元資金を確保しやすくしています。
このような視点を持つことで、より戦略的な経営判断ができるようになりました。また、社員にも財務の基礎知識を教育しています。個人の家計と会社の財務を比較して説明するなど、わかりやすい形で伝えるよう心がけていますね。
「会社の売上は個人の給与、経費は生活費、利益は貯金に相当する」といった具合に、ブロックパズル形式で、身近な例を使って説明することで、社員一人ひとりが財務意識を持って業務に取り組むようになってきているように感じています。
── 戦略的な経営に取り組まれている御社ですが、今後の展望についても教えていただけますか?
柳川:今後は、より筋肉質な組織を目指しています。3年後には60〜70名規模、5年後には100名規模の会社になることを目標にしています。ただ単に規模を拡大するのでは組織の膨張になってしまうので、1人あたりの生産性を高め、車両別損益を軸に効率的な経営を実現したいと考えています。
理想的なのは、間接人員比率を適正に保ちながら成長すること。ドライバー50名に対して内勤2名といった比率を維持しつつ、規模を拡大していく計画です。これは、『ロジックス』の活用が進んだことではじめて可能になる目標だと考えています。
また、多能工化も進めていきたいと考えています。ドライバーにも一部の事務作業を担当してもらうなど、柔軟な業務体制を構築していく予定です。一例ですが、スマートフォンを活用して、ドライバーが直接顧客とコミュニケーションを取れるようにすることで、よりきめ細かいサービスの提供なんかもできたらいいですね。
── 物流業界の発展を目指して、今後もご支援させていただければと思います。今日は、魅力的なお話をありがとうございました!