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どんぶり勘定から、データ経営へ。創業80年の運送会社が経営改善に導入したツールとは

東京・江東区にある、1942年創業の八大株式会社。同社の三代目である岩田社長は、先代の始めた紙物流から生花の輸送へ、そしてチルド食品の輸送へと舵を切ることで継続的な事業の繁栄を実現してきました。今年創業80年目を迎える八大は、「物流の2024年問題」の前に、なぜ運送管理システム「ロジックス」を導入したのか。全日本トラック協会青年部会長も務める岩田社長と、DX推進担当としてプロジェクトマネージャーを務める櫻井様に、導入の背景や導入後の体感について伺いました。

導入企業の特徴(2022年取材時):
社員数68名 / 保有車両57台 / 首都圏に5営業所 / 食品・青果などを輸送

導入時の課題と導入後の変化

絶え間なく訪れる社会変化の中で生き残るために

──早速ですが、ロジックスを導入しようと思った背景を教えてください。

岩田氏(以下、敬称略):

一言で言えば、「経営をなんとかしたかったから」です。運送業界というのは、「利益率は高くないけど仕事はあって、日々は過ごせる」という業界です。運送というとラストワンマイルを連想される方が多いですが、そういうtoC向けの運送は全体のわずか15%で、私たちが担っているのは、BtoBのメーカー間の輸送で、荷物は原材料や中間財などです。そんな運送業者は運ぶものや荷主の業界ごとに細分化されていて、互いの領地を侵食しあうことがあまりないんですね。その上その大半は、トラックも20社以下の小さな会社で、10社・20社という幅広い顧客を持っているところはあまりない。数える程度の荷主さんと付き合い、「ほとんど専属のような立ち位置でいる限り、仕事はある」という状況にあるわけですが、そうやって狭い世界で一定の荷主と付き合って同じものを運ぶということは、その分顧客の変動に経営状況が大きく左右されることを意味します。

たとえば、運賃を相場より安い値段で提示されることも、時にはあります。長い付き合いをしてきた顧客、名の通った企業との間でも、そういうことは残念ながら起こります。大手の荷主にとっては、断られれば、「じゃあ、他所に頼みます」といえばいいのですから。

運送業には社会の変化もダイレクトに響きます。例えば、印刷物を運んでいた運送会社。今は、印刷物の大半がデジタルに置き換わってしまいましたから、多くが廃業しました。弊社も以前は印刷物が8割の業態だったのですが、今ではチルド製品を主とした多角化をして、「名前を聞いて、違う会社かと思った」と言われるほどに変化をしてきました。

コロナ禍による社会の変化や、物流の2024年問題と言われる業界の変化がすぐ迫っているなかで、外部環境の変化にただ振り回されるだけではなく、経営手法を変えなければ、生き残れないのではないか。そう思ったことがロジックスの導入の背景にありました。

インタビューに応じる岩田社長

岩田:先ほどの話に戻りますが、安い運賃を提示された時に「なぜこの値段ではやれないのか」という会話を始めるには、こちら側に情報がないと、できないんです。

「ちょっと、 安くないですか?」という感覚や義理人情ではダメで、数字で根拠を立てて説明することが必要になってくる。具体的に、必要な原価に利益を乗せた形で提案をし返すということです。それでダメなら、もっとちゃんとした仕事になるところに営業をかけるという判断が必要です。

「頼まれるがままに、動く」のではなく、自分たちにも選別基準を持った上で、やっていかなくてはいけない。ただ現状は、経営者でさえも感覚で経営をしているなかで、そんなことはお恥ずかしながらできるわけがなかった。そこで、運送管理業務の管理ツールでありながら、社内のデータを一元集約化することで各種数値(経営指標)の可視化もできるというロジックスの試験導入をはじめてみたのです。

利益を上げようと考える意識改革への必須ツール

──実際に使ってみて、いかがでしょうか?

岩田:
なんとなくであった、稼働率・利益率・単価というすべてが視覚化されたと感じています。 例えば、トラックは 24時間稼働できるわけですが、一人の運転手にとっては、そのトラックが自分が乗った 8 時間以外の16時間の活用状況を知っているわけではない。ましてや、一人がずっと同じトラックのことを把握しているわけでもありません。でもロジックスを通して、このトラックがどんな稼働状況だったか、そういう情報が社内で共有されることで、全体像を一歩引いて把握する意識改革に繋がっていると思っています。

稼働率や利益率といった指標は、経営層だけではなく、チームリーダーや管理部、そ ういう中間層こそが理解しているべきことだと思います。今、弊社は60 名の体制ですが、これを 100名・200名にするには、中間層の教育がマストで、そこに必要なツールだと思っています。

月末の請求書発行業務時間が半減!

──PM(プロジェクトマネージャー)として製品の現場への導入をリードされている櫻井さんは、どうお感じでしょうか?

櫻井氏(以下、敬称略):
これまでは、データ が一元集約されていないことから発生する 管理業務の煩雑さによって、社内で請求書を集めて郵送するまでに、丸3日ほどかかっていました。でも、ロジックスの導入以来、請求書発行のリードタイムが激減し、半分ほどになりました。よりツールに習熟していくと、 さらに効率化ができるのではないかと期待しています。

──新しいものを入れることに、現場からの抵抗はなかったのでしょうか?

櫻井:それは、ありましたね(苦笑)。やっぱり、使い慣れているものがいいと。

岩田:業務効率化ツールの導入に関しては、 現場は反対しがちだと思います。「それによって、やがて自分たちの仕事がなくなるんじゃ ないか?労働時間が短くなって、残業代がなくなるんじゃないか?」と懸念するのが常です。運送業界は平均年齢が高いし、「あと 5 年しかやらない業務を、なぜここから一新しないといけないのか?本当に必要なのか?」と思う人もいるでしょう。弊社も様々なツールを導入してきましたが、ドラレコも、GPSの時もそうでした。それはもう、 経営判断でやるしかありません。ツールの導入は仕事がなくなることではないことを説明し、労働時間の質を変えて、みんなで豊かになるためにやるんだ、と。

うちの担当者も思うところはあったと思いますが、トラックの保有数が20台から70台になって、これまで時間をかけてギリギリ回せていた管理業務が膨れ上がり、 今のやり方に限界も感じてもいたみたいで す。だから、前向きに捉えてくれましたね。

──今後、ロジックスやアセンドに期待することは、どんなことでしょうか?

岩田:
アセンドさんは、やっぱり日下社長の熱さに期待していますね。大きな会社にくっついて、売れればいいっていう、いわゆる「物販の会社」だとは思っていなくて、業界に対するソリューションを一緒に探していける会社だと思っています。これからも、運送業界の楽しいビジョンを一緒に描ければ、嬉しいです。

櫻井氏(左)・岩田社長(右)

(取材・文 / アセンド編集部)